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レポート

2025.06.09

魚屋文化が面白い!小田原で“今日のおすすめ”と暮らす

小田原には、今も昔ながらの魚屋さんが点在し、地元の人々の食卓を支えています。
 

お店の人と交わす何気ない会話。
旬の魚をその場で教えてくれる安心感。
そして、顔の見える商い。

都市ではなかなか味わえなくなった買い物の風景が、ここには当たり前に息づいています。


そんな魚屋文化の魅力をもっと知ってもらおうと、小田原では「魚屋カード」というユニークな取り組みが始まりました。カードをきっかけに取材を進めていくと、その先にいたのは魚を知り尽くし、人とまちをつなぐ魚屋さんの姿。
 

この記事では、「魚屋カード」を入り口に広がった小田原の魚屋文化の面白さと、人とのあたたかなつながり、そして地魚のある暮らしの魅力をお届けします。

魚屋さんがご近所さん。小田原で見つけた、顔の見える暮らし

小田原のまちを歩いていると、ふと目に留まるのが、昔ながらの魚屋さん。店先には、その日獲れた新鮮な魚がずらりと並び、店主の元気な声が聞こえてきます。そんな風景が、暮らしの中に自然に溶け込んでいるのが、小田原らしさのひとつです。

都市部では少なくなった“まちの魚屋さん”ですが、小田原にはいまも多くのお店が残っています。地元の人たちにとって、毎日の食卓を支える心強い存在です。

「今日は何が美味しい?」なんて会話を交わしながら買い物ができるって、ちょっとうれしいですよね。そんな魚屋文化をもっと知ってもらおうと、小田原で始まったのが「魚屋カード」。

市内の魚屋さんの顔写真とひとことコメントが載ったカードで、健やかな食のまち小田原推進協議会小田原地魚大作戦協議会が連携して制作し、イベントなどで配布されています。初めての土地では、どのお店に行けばよいか迷うものですが、こうして店主の顔や言葉を事前に知っておくことでグッと近づく。そんな仕掛けが始まっています。

小田原市内の魚屋さんたちがカードになった“魚屋カード”

「魚屋カード」の先にいたのは、魚屋「魚竹(うおたけ)」さん

今回は、実際に魚屋カードにも登場している「魚竹」さんを訪ね、2代目店主の竹内さんにお話を伺いました。昭和39年創業の老舗で、鴨宮駅南口近くに店を構え、長年地域の人々に親しまれてきたお店です。

店先には、マグロやイカ、旬のカツオ、アジ、カワハギなど、季節の魚がずらり。その場で料理方法の提案をしてくれたり、下処理をしてくれたりと、「献立相談ができる魚屋さん」という雰囲気が漂います。

「魚は自然の恵み。だからこそ、できるだけいい状態で届けたい」と話す竹内さん。

「魚を締めてくれるのは漁師さんです。『活け締め』『神経締め』を施し、血をしっかり抜いて最高の状態にしてくれる。そのひと手間があるからこそ、お店に届いたときの魚の味が違うのだ」と言います。

「漁師さんは本当に忙しいんです。それでも、できるだけ丁寧に処理してくれている。その努力と技術に支えられて、僕たち魚屋は魚を届けられるんです。夜中に風の中を出航して、魚を獲って締めてくれる。その背景をお客様に伝えることが、僕らの使命だと思っています」

竹内さんの言葉には、漁師さんへの深い敬意が込められていました。

魚竹の店主・竹内さん。魚の話を始めると自然と笑顔に

魚屋は“あのひとこと”に弱いんです

「魚屋さんって入りにくいですよね」

そんな話題を向けたとき、竹内さんが笑いながら教えてくれたのが、ある“魔法の言葉”の存在でした。

「『今日のおすすめは?』って聞かれると、魚屋は弱いんですよ。そう言われたら、こっちも“よし、いいの出すぞ!”ってなるんです」

それは、竹内さんだけでなく、他の魚屋仲間たちにも共通する感覚だそうです。

「高い魚じゃなくていいんです。今、美味しい魚を、手に取りやすいかたちで提案したい。そんな気持ちが自然に出てくるのが魚屋なんですよ」

魚屋との付き合い方に慣れていない人にこそ、この“ひとこと”を覚えていてほしい。それが竹内さんが教えてくれた魔法の言葉でした。

「魚のこと知らなくていいんです。『おすすめある?』って聞いてもらえたら、もうそれだけで十分なんです」

“おすすめは?”のひとことが、魚屋さんのやる気スイッチ
店頭には本日のおすすめも掲示されている
店頭には本日のおすすめも掲示されている

会話で変わる献立、魚屋で見つかる新しい味

魚竹さんでは、買い物というより対話が日常です。

「この魚はムニエルがいいですよ」
「味噌汁に入れるならこっちの方がいいかも」

そんな竹内さんのひと声に、お客さんも思わず献立を変更してしまうこともしばしば。

「元々タラを買おうと思っていたけど、カワハギが良さそうだから煮付けにしてみようかな」
「ヤガラ? 聞いたことないけど、面白そうですね」

魚屋での買い物には、そんな発見があります。

「スーパーも便利だけど、魚のことを直接聞けるのが魚屋の強みです。会話があるからこそ、お客様に合った魚を提案できるんですよ」

顔の見える買い物は、時に予定を変え、料理の幅を広げてくれます。
そこにあるのは「売る」「買う」だけではない、温かなやり取りです。

取材中にお客様と会話する竹内さん。「ムニエルにどうですか?」そんな一言が献立を変えるきっかけに

魚屋カードは“会話のきっかけ”に

魚竹さんも参加している「魚屋カード」には、「お料理の献立をご相談ください!」という竹内さんらしいメッセージが添えられています。

カードは、市内の魚屋さん一人ひとりが主人公。
顔写真とひとことメッセージがあることで、どんな店主なのか、どんなお店なのかが伝わりやすくなっています。

「魚屋って入りづらいな」という方にこそ手に取ってほしい一枚です。

ちなみに、小田原地魚大作戦協議会のウェブサイトでは小田原市内の魚屋さんが紹介されています。
気になるお店をもっと知りたいときは、ぜひこちらもチェックしてみてください。
 

小田原地魚大作戦協議会魚屋紹介ページ(外部サイトリンク)
魚竹さんの魚屋カード。魚屋さんとの距離を縮める、会話のスイッチになる1枚

魔法のひとこと「今日のおすすめは?」を試してみました

取材の最後、竹内さんに「魔法の言葉、使っていいですか?」とお願いしてみました。

「今日のおすすめは何ですか?」

希望の金額と一緒に、そう尋ねると、竹内さんはにっこりと笑って、「小田原尽くしでいきましょう!いいものを選びますね」と魚を選び始めてくれました。

そして数分後、用意してくださったのがこちらのセット。

竹内さんが“今日のおすすめ”で選んでくれた魚たち

アオリイカ、イサキ、アジのなめろう、カツオの塩たたきと、すべて地元で獲れた新鮮な魚で、まさに“小田原の海の恵み”が詰まった盛り合わせです。

「旬の魚を、小田原の自然に感謝しながら味わってほしい」

竹内さんのそんな想いが詰まった贈り物でした。

“今日のおすすめ”を提供しながら、思わず表情がほころぶ竹内さん
“今日のおすすめ”を提供しながら、思わず表情がほころぶ竹内さん

小田原で“顔の見える”食のある暮らしを

「小田原の魅力は、自然と歴史、そして人」と語る竹内さん。

海と山に囲まれた環境、新幹線で東京や名古屋へアクセスしやすい立地、そして日々の暮らしを支える人々の存在。小田原には、便利さと豊かさが共存する「ちょうどいい暮らし」が広がっています。

魚屋という商売を通して、人と人がつながっていく日常。
魚を通じた会話、提案、そして出会い。
そんなやりとりの積み重ねが、このまちの暮らしのあたたかさを形づくっています。


移住を考えている方は、まずは市内の魚屋さんを訪ねてみてください。
「今日のおすすめは?」のひとことが、小田原での新しい暮らしの扉を開いてくれるかもしれません。

今回取材したお店はこちら

DATA
「魚竹」
神奈川県小田原市南鴨宮3-7-6
営業時間:9:00~18:00
定休日:水・日
google MAP:https://x.gd/dnGTK
Instagram:@uotake_odawara

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