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レポート

2023.12.08

小田原での「暮らし」と「仕事」を彩る、”地域”の 魅力と”つながり”の心地よさ / 作業療法士・初鹿 真樹さん

初鹿さんの写真

新たな地に「移住」するということ。 

それは生活環境が変わるということと同時に、"働く"環境が変わる、という要素も含んでいます。 
小田原に移住してきた方の中には、新しくお店を開業した人や、在宅でリモートワークをしている人だけでなく、近隣市町村にある勤務先に通いつつ、地域の生活を楽しんでいる方も沢山います。 

その業種は多岐に渡りますが、今回は、小田原市在住で作業療法士として勤務、ライフワークでは県西エリアでバリアフリーに関わる活動を展開している初鹿真樹さんに、小田原への「移住」と、ここでの「働き方」について、伺ってきました。

結婚と同時に小田原へ。
好奇心をそそる、けれど自然豊かな地域。

「移住、って言っていいのかな…」と本人も戸惑うほど、初鹿さんが小田原へとやってきたのは、ごく自然な流れでした。 

出身は、東京の東久留米市。 

東京農業大学を卒業後、農業系の出版社に勤めていましたが、高校時代の怪我が原因で動くことができなくなってしまい、入院、手術。 それが自分の人生について見つめ直す機会となり、この体験を活かしていこうと、新たに「作業療法士」の道を目指すことを決意、一から勉強を始めたそうです。 

その資格を取得後、最初の勤務先である茅ヶ崎の病院で出会ったのが、今の奥さんでした。 

奥さんの実家が小田原だったことから、初鹿さんは、結婚と同時に小田原に新居を構え、暮らすようになったのです。 

小田原の桜
小田原の最初の印象は「海外みたい」。 

土地勘が無かったこともありますが、歴史に由来する独特なまちのつくり、一方通行の多い道路など、そのひとつひとつが、もともと旅好きな初鹿さんにとっては、戸惑いと共に、好奇心をそそる要素だったのかもしれません。 
小田原の海
また、自然豊かな東久留米で育った初鹿さんは、自然が大好き。 
東久留米には海がなかったため、海を見ると、いまだに「うわっ!海だ!」と思うそう。 
小田原生まれのお子さんたちが海を当然と思っている様子に「もうちょっと感動しろ、って言いたくなる」と笑います。

生活しやすさの要因は、
落ち着く環境と、増え続ける友人知人。

スーパーの様子
初鹿さんたちが暮らしているのは、小田原駅から徒歩圏内にある住宅地。 
「すごく生活しやすいです。落ち着く」 
スーパーマーケットも目と鼻の先。
夕方の魚が安くなる時間帯を狙って、よく買い物に行くのだそう。 
釣りをしている様子
日々の過ごし方は、平日は仕事、休日は社会活動…と「何かしらやってますね(笑)」という多忙ぶりですが、「自分では、そんなに忙しいとは思ってなくて」。
「この間は、朝子供を連れて湯河原まで釣りに行って、昼はARUYO ODAWARA(※)のイベントに行って、夕方子供のミニバス仲間たちとカラオケに行って、みたいな」 

分刻みの休日スケジュールを、逆に楽しんでもいる様子です。 
仕事や社会活動、そこから派生するつながり…小田原に来てからは、友人知人も増え続けていると話します。 
それもまた、初鹿さんの小田原での生活のしやすさを裏付ける要因となっているのかもしれません。

※2022年オープンのクリエイティブスペース。定期的にイベントも開催
移住したら顔を出してもらいたい場所が"アルヨ"

県西で「作業療法士」として働く面白さと、広がる可能性。

日々の働き方はというと、週4日の訪問看護ステーションへの"通勤"と、週1日の別の会社での"非通勤"という、全く異なる2つの勤務スタイル。
初鹿さんの写真
訪問看護ステーションでの仕事は、作業療法士としての訪問リハビリテーション。 
事業所で朝礼や庶務作業を終えた後、社用車で1日4~6件の利用者さんのところへ向かい、ご自宅でのリハビリテーションを行います。 
エリアは箱根全域、真鶴、湯河原、小田原の半分くらいまで。 
一箇所一箇所の移動距離の長さには驚いたそうですが、「まあ、でも自分の時間持てるから楽しいかな」とのこと。 
それ以上に面白さを感じているのが、地元の年配の方々から見聞きする地域のお話です。 
「ああ、そんなつながりがあったんだ、そういうことなんだ…っていうのを、色々やる中で知っていくのが、すごく楽しくて」 

最近始まったという週1日の仕事は、それらとはガラリと異なる、初鹿さんにとっては新たなチャレンジともいえるものでした。 
ライフワークの活動でつながりのあった会社から、バリアフリーと観光に関わる新規プロジェクトの担当者として声をかけられたのです。 
"非通勤"とはいっても、在宅での事務作業というよりも、プロジェクト推進のために必要なことを能動的に進めていくような、かなり自由度の高いもの。

仕事のようす
だからこそ「責任も重い」と、早くもプレッシャーを感じているそうです。 
それでも、その一歩を踏み出した理由は、今一般に広くいわれている"リスキリング"のような感覚もあり。 
「これから新しい分野に挑戦していくとして、自分に何ができるのかな…って思った時、今までさせていただいた活動を活かせないかなって。今、もがいてる最中です(笑)」

小田原に来て出会った”地域での社会活動”が
いつしか大切なライフワークに。

その初鹿さんの道のりの原点といえる"地域での社会活動"。 
きっかけは、小田原に住んで1年ほど経った頃、当時の勤務先・中井町の介護老人保健施設の先輩に、県西地域の医療従事者のネットワーク(現「一般社団法人 神奈川県西地区リハビリテーション協議会」。以下「県西リハ」)の存在を教えてもらったことでした。 
「"横のつながり"ができるよ、って」 

茅ヶ崎の病院にいた頃も、作業療法士の全国的な勉強会はあったものの、医療者は市外からの通勤も多く、"地域"に取り組んでいるような組織はなかったと振り返ります。 
"つながり"と"地域"…「暮らすこと」と「働くこと」の距離の近い県西エリアらしい活動に、初鹿さんは、徐々に本格的に関わっていくようになっていきました。
バリアフリーマップ
その県西リハのイベント「リハビリフェスタ」で、2019年に企画されたのが、"小田原のバリアフリーマップ作成"。 
最初は手描きの狭い範囲のマップでしたが、まち歩き要素も加味していってイベント化、地域の教育施設・メディア・団体等と連動、バリアフリー情報投稿アプリの活用…等々の工夫を重ねていき、次第に継続した活動となっていきました。 

その活動や交流の拡大に伴い、今度は、観光協会や商店街、社会福祉協議会などとのコラボレーションの企画も立ち上がるようになったのです。
バリアフリーに関わる実証実験や体験企画、調査、動画制作…等々の活動にも、初鹿さんは広く携わっていくようになりました。 

勢いは止まらない!
海へ。まちへ。そして原点へ。

ユニバーサルウォークの写真
直近で実施した活動としては、2023年11月18・19日開催の「城下町おだわらツーデーマーチ」での特別企画「ユニバーサルウォーク」(18日のみ)。 

車椅子ユーザーを対象にしたウォーキング企画です。 初鹿さんを中心とした専門職チームと共に、楽しみながら歩けるような内容を考えました。 
申し込まれたユーザーさんには、こういったイベントへの参加は初めてという方も多く、「大きいイベントに"参加する"ことに意義があるのかな」と、初鹿さんは話します。 
ユニバーサルウォークの写真
アクティブな車椅子ユーザーも増えてきたとはいえ、まちへ出ることに慎重な人も多い現状。 
「もし外に出たい、関わりたいと思っているのなら、そのきっかけの一つになれば」 
初鹿さんがずっと抱えている思いです。
みんなでMIYUKI BEACHのようす
そのもう一つの形でもあるのが、今年は台風で中止になったものの、昨年県西地域での初開催をはたし、今後の通年開催も予定しているバリアフリービーチ企画「みんなでMIYUKI BEACH」。 
小田原に海水浴場があることを知った初鹿さんが、ことあるごとに「バリアフリービーチをやりたい!」と言っていたところ、地域や活動のつながりから、急遽、その海水浴場・御幸の浜の海の家を拠点に開催できることになった…という、まさに小田原らしいストーリー。 

他にも、2024年3月3日に開催される予定の、初鹿さんにとっては原点でもある「小田原Rフェス(旧リハビリフェスタ)」では、"車椅子×着物×まち歩きガイド"を織り交ぜた企画なども考えているそうで、その勢いは止まるところを知りません。

ここでやりたいことは「すごくいっぱい」。

小田原の空
そういった社会活動は今後も変わらずライフワークとして続けていきつつ、仕事面でも、新たな挑戦を実らせるべく、学び直し、可能性を拓いていきたいと言う初鹿さん。 
もう少し余裕ができたら、オフタイムでやりたいことがいっぱいあるそうです。 
「サップ、釣り、温泉巡り、キャンプ…お金があったら、バイクもほしい(笑)」 
小田原の海の様子
挙げはじめたらキリがありません。 
それもそのはず。 
周囲には、サップや釣りやキャンプが楽しめる自然も、温泉も、ツーリングスポットも、環境は整っています。 
「子供の頃の原体験があるので、やはり自然の中で生活するのがすごく好きなんです。それの大きいのがここにある、みたいな」 
ごく自然な流れでの小田原への移住。 
そこにあった環境との相性のよさと、何より"地域"の魅力、"つながり"の心地よさ。 

それは、働くことにも多くの影響を与え、今の初鹿さんの暮らしを彩っています。 

「以前は"地域"が見えてなかった。今は、子供たちにも『小田原っていい街だよね』って思ってもらえるよう、この地域に対して何かできることはないのかな?って思っています」

磯遊びの様子

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