レポート
鴨宮エリアにできた、やわらかくつながれる新しい居場所「かもすた」
鴨宮駅北口を出て、商店街の通りを1分歩くと見えてくる、レンタルスタジオとコワーキングスペースの「かもすた」。
2023年10月末にオープンしたこの施設を運営している中津川さん、石塚さんにお話しを聞いてみました。
「かもすた」をオープンしたきっかけ
中津川さんはもともと小田原市鴨宮出身。
2年ほど前、二人で設計事務所を開所するにあたり、拠点を小田原に移されました。
石塚さんにとってはいわゆる「移住」、中津川さんにとっては「Uターン」という形になります。
商店街の通り沿いにあったもともとの物件を、中津川さんのお知り合いの方が所有していましたが、手放すことになり、
「知らない人に渡って、よくわからないものに変わってしまうのなら」と、急遽、その物件を手にされました。
鴨宮エリアは、駅から15分ほど歩けば大型ショッピングモールがあり、生活に不便はないエリアですが、中津川さんと石塚さんは、駅の近くに気軽に立ち寄ることのできるカフェや居場所のようなところが欲しいとずっと思っていたので、そういう場所になればと準備を始めたそうです。
「当時は自分たちが運営をするつもりはなかったのですが…(笑)周りからの後押しもあり、自分たちで運営する事にしました」
何かを始めたい人がやわらかくつながれる場
「ふらっと立ち寄れる場所」を作るというイメージから、スペースの機能を考えていったお二人。
1Fはイベントなどで使いたい人向けのレンタルスタジオ、2Fはリモートワークをする人向けのコワーキングスペースといった利用のされ方をイメージしていましたが、スペースの機能を考えていく過程で、二人の中に「何かを始めようとしている人の背中を押したい」という気持ちがある事に気がついたそうです。
1Fのレンタルスタジオでは、イベントだけではなく、これからお店の開業を考えている人が一歩を踏み出して営業できるような場に。2Fのコワーキングスペースはさまざまな人に利用してもらい、つながりを持ちたい人が記入する自己紹介カードでどんな利用者さんがいるのかを知る。また、仕事の合間に1Fで営業しているカフェで一休みしながらカフェ運営者さんとお話をする。
そうやってつながった「何かを始めたい人たち」を後押しできるような仕組みをつくりたいという思いが二人の中で具体的になっていきました。
何かを始めたい人が、この場を利用することで、やりたい事が形になっていく。
また別の誰かが、その行動体験に後押しされ、やりたいことを始めるきっかけとなる。
それぞれが「やわらかくつながれる」場。
「鴨宮駅の近くにカフェのような空間があったらいいな」という思いからはじまったこのスペースのイメージは、「何かを始めようとしてつながる・行動する人たちを後押しするため」の場へと変わっていき、そのような思いから、このスペースは「Kamonomiya Start Place(かもすた)」という名前になりました。
実はこういう場が求められていた
「始める前は、お店を開業しようとしている人や、コワーキングスペースを利用する人がこのエリアにいるのか、といった不安はありましたね」
オープンしてみると、レンタルスタジオを利用した飲食店の出店を希望する人から問い合わせがあり、不定期での出店が始まりました。コワーキングスペースもリモートワークで利用する方の利用申込があるなど、このエリアに住んでいる方も、このような場を求めていたのかもしれません。
「かもすた」主催で定期的にワークショップも開催しており、毎回、さまざまな方が参加されるそうです。先日開催したワークショップでは、かもすたに「あったらいいな」「やってみたい」というテーマで参加者に思いを聞いてみたそうです。
「ワークショップは、この地域のいろいろな人の思いを知る事ができ、ワークショップをきっかけに知り合う人も多くいることから、継続的に開催していきたいですね」
地域の魅力をもっと発信していきたい
コワーキングスペースの利用者やワークショップの参加者の中には小田原に移住してきた方もいるそうです。このように施設を利用する小田原に移住してきた方の多くは、新しいつながりを持ちたいという思いや、これをきっかけに何かを新しく始めたいという思いを持っているという事にも気がつけたそうです。
こういう場がなかっただけで、何かをやりたい、地域の人とつながりたいと考えている人が実はたくさんいるという事がわかり、改めて、そういった人たちの挑戦のハードルを下げられるような場を提供していきたいと思えたそうです。
「鴨宮駅周辺には、魅力的なお店がたくさんあると思うので、それを見える化できたらとも思っています。鴨宮駅周辺が”目的地”になることは、現時点では少ないと思うのですが、情報発信していくことで、面白いエリアだということを認知してほしいです。たとえば、鴨宮駅周辺のお店・スポットのマップを作ってみたいですね。情報発信をきっかけに、そのお店の方や、何かをやりたい・変えたいと思っている方ともつながっていけると、より楽しくなりそうとも思います」
他には代えがたい場が「心地良さ」を生み出す
また、「かもすた」は「心地良さ」「豊かさ」を感じられる場になるべきなのでは、とも話します。
「"暮らしやすさ"と"心地良さ"には差があると考えます。もちろん、買い物に便利といった"暮らしやすさ"は、とても大事なことだと思いますし、鴨宮にはその点は備わっていると思います。一方で"心地良さ""豊かさ"はまた別で、この場所、このエリアにしかないお店や空間、そこの人間性にあふれた場など、そういう"他には代えがたい場"というものが、"心地良さ""豊かさ"には必要なのかもしれません。『かもすた』もそういう機能があるべきだと思うようになりました」
多様な人がいるという魅力
鴨宮エリアは、歴史的な建物やお店の多い小田原駅前と比べると比較的新しく発展したエリアです。
「昔から住んでいる人もたくさんいるけれど、新しく住み始める人も多いエリア。そういう意味では世代も幅広くて、かつ、働き方も自営業からリモートワークまで多様だと思います。その中には、新しい事を始めたいと思う人もいる。多種多様な人がいるから、それぞれの思いによってこのエリアの魅力が更新されていくと思います。そういった魅力を少しずつでも発展・発信していきたいですね」
自身は移住者でもある石塚さんは小田原に住みはじめてからの印象を次のように話します。
「既に何かを始めてがんばっている人やこれから何か行動しようとしている人がいることを体感的に感じられたことは大きかったと思います。かもすたを運営しはじめたことでさらにこの"人のチカラ"のようなものをたくさん感じてます」
何かをやろうとしている人がいる、がんばっている人がいる。
そういう空気感があるからこそ、「かもすた」は”何かを始める人を後押しする”、”やわらかくつながれる”場になっていこうとしているのかもしれません。
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