小田原発、ライフスタイルを考えるメディア

レポート

2019.05.31

【mi's navi】 テーマは”交流”。ただ泊まるだけではない新しいかたち。

かつて宿場町として栄えた小田原。
その小田原に今、いわゆる「ゲストハウス」と呼ばれる宿泊施設が、じわじわと増えています。

「ゲストハウス」のイメージといえば、
  ・リーズナブルな料金
  ・外国人客の多い、インターナショナルな雰囲気
  ・スタッフや宿泊客、地域の人との交流
といったところだと思いますが、
一軒一軒を見てみると、特徴も仕組みも千差万別。
それぞれにオリジナリティあふれるスタイルで、小田原を訪れたお客さんを魅了しています。

彼ら彼女らは、なぜ「ゲストハウス」を小田原でやろうと思ったのか?
どういう思いで、そのスタイルをつくりあげたのか?
日々どうお客さんとふれあい、今後、もっとどうしていきたいと思っているのか?


苦労していることも含めて、お話をうかがってきました。

【GoodTrip Hostel&Bar】1番のテーマは”交流”

GoodTrip外観。店名の看板も旅で出会った友人に製作を依頼した。

GoodTrip外観。店名の看板も旅で出会った友人に製作を依頼した。

[創業] 2017年
[場所] 宮小路エリア
[部屋] ドミトリー/部屋貸し
[予約] 予約サイト/HP/電話/メール
[特徴]
・交流の場としての”ラウンジ≒バー”
・お客さんとのやりとり、ゲストノートなどを通しての”思い出の共有”
[コンセプト・やりたいこと]
1番のテーマは”交流”。
小田原のディープゾーン&歴史的エリア”宮小路”での、『ただ泊まるだけではない、新しいかたちの宿泊体験』

ゲストハウスをやろうと思ったきっかけ&経緯って?

「自分の旅の経験がここに結びついてる」と、オーナーの中村力弥(なかむら りきや)(通称:リッキー)さん。
オーナーのリッキーさん。1Fに併設のバーのマスターでもある。
オーナーのリッキーさん。1Fに併設のバーのマスターでもある。
24歳の頃、21世紀最長の皆既日食を見るために、バイクと小さなパックひとつで、鹿児島県の奄美大島へ。
その際泊まったゲストハウスをきっかけに、宿泊客や、同じく日食を見にきた面白い人たちと、すぐに仲良くなっていったそう。
結局日食は天候により見ることができなかったものの、その友人たちの家をめぐりつつで、喜界島、種子島、屋久島、九州、中国エリア、大阪、京都…と、旅は続いていきました。
「ゲストハウスってすごいなって」
それが、リッキーさんの”宿”の原体験。

その頃から、”ゲストハウス”はリッキーさんの目標となったそうです。
翌年には東南アジアも旅し、今まで見えてなかったものも見えてきた、と話します。
旅を共にしたバイク。ボディには奄美大島のステッカー。(リッキーさん撮影/2009年)

旅を共にしたバイク。ボディには奄美大島のステッカー。(リッキーさん撮影/2009年)

奄美大島で出会った旅人たちとの、ビーチでのパーティー。(リッキーさん撮影/2009年)

奄美大島で出会った旅人たちとの、ビーチでのパーティー。(リッキーさん撮影/2009年)

九州を北上中に「いい感じの灯台」があったところにて。(リッキーさん撮影/2009年)

九州を北上中に「いい感じの灯台」があったところにて。(リッキーさん撮影/2009年)

奄美大島での最後のパーティ。地元の漁師や国内外から日食を見に来た仲間たちと。(リッキーさん撮影/2009年)

奄美大島での最後のパーティ。地元の漁師や国内外から日食を見に来た仲間たちと。(リッキーさん撮影/2009年)

「タイで出会った若い修行僧が、日本が好きだけど僕らは行けない、お金がないから。って言う」

旅先には、生活してる人たちがリアルにいるという感覚や経済状況の違いなどを感じた。

「旅をするのは、本を読んだり勉強するのと似た感じ」

開業の決意をしてからは、宿屋で住み込みで働いたり、マネージャー業務で経験を積むなどして、準備を整えていきました。

今の場所を選んだ理由、魅力は?

もともと”宮小路”も含めて、一本海側の道のあたりで場所を探していたそう。
それは旧東海道の”小田原宿”。宿を開業するには何とも魅力的な立地です。
とはいえ、エリアには空き店舗も多く、建物自体も築年数が経っていて、決めるのに迷うところはありました。
それでも、面白いところだなと思った、とリッキーさん。
味わいのあるスナックや、通も唸る美味しさの小料理屋や居酒屋。
「雰囲気や空気感がディープで、お客さんとの距離感も近い」
オープンまでの4ヶ月、友人たちと寝袋で寝泊まりしつつ、改装工事を進めました。
「ずっと気になってたとか、何やってんのかと思ってたとか、完成してから言われることが結構あって。気にして
見てくれてたんだなって」
 
宮小路。この通りの左手側に松原神社、右奥にGoodTripがある。

宮小路。この通りの左手側に松原神社、右奥にGoodTripがある。

一本海側の道はかまぼこ通り。観光客も行き交う。

一本海側の道はかまぼこ通り。観光客も行き交う。

「GoodTrip Hostel&Bar」らしさって?

ゲストハウスのラウンジでもある”バー”に集う、宿泊客や地元の人たち。
ゲストハウスのラウンジでもある”バー”に集う、宿泊客や地元の人たち。
〈手作り&温もり感〉
友人たちと寝泊まりしながら改装工事を進めた。(GoodTripフォトブックより/2016年)

友人たちと寝泊まりしながら改装工事を進めた。(GoodTripフォトブックより/2016年)

木のぬくもりある雰囲気の店内。

木のぬくもりある雰囲気の店内。

「(内装で)残ってる部分といえば、床のフローリングとイスと表の看板くらいかな(笑)」
と言うほど、仲間たちと、自分のイメージするゲストハウスへと改装していきました。
一方で、家具や雑貨などは「ほとんどもらい物」だそう。
駄菓子屋で使われていたもの、ご近所の方からまわりまわってここにあるもの、解体屋の友人からもらったもの、ガレッジセールで購入したもの、などなど。
使い込まれた色々なものがここに集結、温もりある雰囲気づくりに一役をかっています。
4mの一枚板の長テーブル。(GoodTripフォトブックより/2017年)

4mの一枚板の長テーブル。(GoodTripフォトブックより/2017年)

〈ラウンジ≒バー〉
ラウンジが”バー”になっているのも、大きな特徴。
廃材の一枚板で作った長テーブルは、フロアのほとんどの面積を占め、リッキーさんも「わりとありえない」と笑います。
「でも、元々やりたかったこととして、”地域の人と旅行者の交流スペース”みたいなのだったんで。この方がいいかなって」

ゲストハウス×”宮小路”

空店舗がいっぱいあった〝宮小路〟に、GoodTripの開業から2年、その間にも新しいお店が続々とオープンしています。
「すべてうちの影響だとは思わないけど、実際始めた人が、『GoodTripがあるから、宮小路で商売始めようと思った』って言ってくれて」
逆に今〝宮小路〟は新しい形をつくりやすい、とも話します。
行灯と店の灯りがともり始める、夕方の宮小路。

行灯と店の灯りがともり始める、夕方の宮小路。

「家賃も安いし、エリアとしてのストーリーもあるし、可能性は小さくはないかな」
地域のお客さんがバーに来てくれるのは、「”宮小路”でやってるからかな」とも。

歴史があり、繁華街としての知名度も十分なエリア。
その分、夜の街、怖い、といったイメージも持たれがちだけれど、「この現状を見たら、今の”宮小路”をわかってもらえると思う」。
バーカウンターに並ぶお酒たち。

バーカウンターに並ぶお酒たち。

駅から15分。
少し離れている距離も、リッキーさんにとっては「狙いだった」そう。
便がいいからではなく、”目的”として来てくれるような、エリアであり、ゲストハウス。

「導線を持ってきたいっていうのもあったし。駅→お城→駅じゃなくて、お城→かまぼこ通り→海、みたいな」
また、徒歩や自転車で東海道五十三次に沿った旅をするなど、駅を起点としない宿泊客も多いそうです。

一方で、日本人ビジネス客の利用も多く、彼らにとっての一つの魅力として、近隣のお店や併設のバーで心置きなくお酒を飲み、そのまま眠れることがあります。
まさに〝宮小路〟ならではの動機です。

課題、苦労してることって?

改装前のイメージスケッチ。

改装前のイメージスケッチ。

通常業務や予約・問合せ対応などを含めると、どうしても拘束時間が長くなってしまうのが、目下の課題。
けれど、予約締切やお客さん対応などはギリギリまで可能にしたい、という思いもあるそう。
ウォークインで来るかもしれないお客さんを待ったり、話が盛り上がって23時に消灯するのが心苦しかったりすることもあるけど、宿泊客の立場に立ち、あえて苦労を買っている面も。
また、日々、経営するということの大変さを感じることも多いそうです。

「難しいとは思わないですけど、トライすることがいっぱいあったりとか。でも、トライしたことの反応も直に感じたり、まあ楽しいですね

今後の展望&方向性

大きめの展望ですが、と前置きしつつも、「”宮小路”が、小田原で色んな意味で価値が高まる、注目される、活気あるエリアになることを目指したい」と話すリッキーさん。
「おしゃれなスポットだったりとか、美味しいもの食べに行くんだったら宮小路、とか、夜は宮小路でしょ、みたいな。それは1人じゃできないんで。近隣のみんなと協力して、成し遂げたいなと」
「”小田原に来てよかったな”って思いながら、床についてほしい」(GoodTripフォトブックより/2017年)

「”小田原に来てよかったな”って思いながら、床についてほしい」(GoodTripフォトブックより/2017年)

ステンドグラスは知人のハンドメイド作品。(GoodTripフォトブックより/2017年)

ステンドグラスは知人のハンドメイド作品。(GoodTripフォトブックより/2017年)

二段ベッドのハシゴは上りやすいように斜めになっている。(GoodTripフォトブックより/2017年)

二段ベッドのハシゴは上りやすいように斜めになっている。(GoodTripフォトブックより/2017年)

ゲストノートに寄せられる、国内外の宿泊客からのメッセージ。

ゲストノートに寄せられる、国内外の宿泊客からのメッセージ。

「GoodTrip Hostel&Bar」
[住所] 小田原市本町2丁目13−5
[電話] 0465-59-0120
[HP] http://goodtrip.hippy.jp/
[予約サイト]booking.com / 楽天トラベル / じゃらん / Airbnb
ライター(mi meguro)プロフィール

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