レポート
2020.09.01
【mi's navi】真面目に楽しく「国府津」をBLENDする-杉山大輔さん
「小田原」と一言でいっても、それぞれエリアによって見える景色も違えば、たたずまい、生活している人、まちの空気も違います。
今回の舞台は、「国府津」。
小田原に住む人にとっては、車で行き来することの多いエリアですが、最寄駅は東海道本線・御殿場線の国府津駅。
なんといっても、1号線沿いにずっと見える海とその反対側にそびえる山が印象的な、どこかゆったりとしたエリアです。
最近の国府津の雰囲気を活性化させているのが、このエリアにオープンしている、『BLEND』という名のつく、コワーキングスペース、レンタルスタジオ、民泊、イベントスペース、等々の施設。
特に、『BLEND PARK』と呼ばれる元ボルダリングジムの倉庫型イベントスペースは、コロナ禍でも〝無人販売商店〟などの新しいスタイルを企画、生産者や販売者の経済活動の場として、住民の憩いや交流の場としても喜ばれています。それら一連の仕掛け人が、地元の建設会社の営業課長でもある、杉山大輔さん。ライフワークとしてこれらの活動をしているという杉山さんに、『BLEND PARK』について、「国府津」について、そして〝地域をつなぐ活動〟について、お話をうかがってきました。
今回の舞台は、「国府津」。
小田原に住む人にとっては、車で行き来することの多いエリアですが、最寄駅は東海道本線・御殿場線の国府津駅。
なんといっても、1号線沿いにずっと見える海とその反対側にそびえる山が印象的な、どこかゆったりとしたエリアです。
最近の国府津の雰囲気を活性化させているのが、このエリアにオープンしている、『BLEND』という名のつく、コワーキングスペース、レンタルスタジオ、民泊、イベントスペース、等々の施設。
特に、『BLEND PARK』と呼ばれる元ボルダリングジムの倉庫型イベントスペースは、コロナ禍でも〝無人販売商店〟などの新しいスタイルを企画、生産者や販売者の経済活動の場として、住民の憩いや交流の場としても喜ばれています。それら一連の仕掛け人が、地元の建設会社の営業課長でもある、杉山大輔さん。ライフワークとしてこれらの活動をしているという杉山さんに、『BLEND PARK』について、「国府津」について、そして〝地域をつなぐ活動〟について、お話をうかがってきました。
BLEND PARKについて
中で『無人販売商店』を開催中のBLEND PARK。顔を出す杉山さん。(杉山さん提供。2020年撮影)
前身であるボルダリングジムを運営していたのも、実は杉山さんたちでした。
仲間の皆さんとNPOを立ち上げて楽しくやっていたそうですが、次第に同様のお店が増えてきたことで、
きちんと経営しないと難しい状況になったということもあり、売却を決意。
けれど2019年の台風の直撃を機にボルダリングジムは移転、再び、建物だけが残りました。
「自分としては、あの倉庫、あの位置、あのエリアでまだやりたいことがあって」
引き続き、杉山さんが借りる形で、〝場〟を引き継ぐことになりました。
仲間の皆さんとNPOを立ち上げて楽しくやっていたそうですが、次第に同様のお店が増えてきたことで、
きちんと経営しないと難しい状況になったということもあり、売却を決意。
けれど2019年の台風の直撃を機にボルダリングジムは移転、再び、建物だけが残りました。
「自分としては、あの倉庫、あの位置、あのエリアでまだやりたいことがあって」
引き続き、杉山さんが借りる形で、〝場〟を引き継ぐことになりました。
国府津にないもの、そして、時代に必要なものをつくりたい
国府津の海。(杉山さん提供。2020年撮影)
杉山さんは、国府津を訪れた人に長く滞在してもらい、自身にとっては「のんびりできる場所」である〝国府津〟や〝国府津の海〟を感じてもらうために、ここで何ができるのかを考え続けました。
気づいたのが、「国府津には、人の集まる場所が少ない」ということ。
公民館もあまりなく、公園という公園もないのだそう。
「やっぱり、国府津にないものをつくりたい」
気づいたのが、「国府津には、人の集まる場所が少ない」ということ。
公民館もあまりなく、公園という公園もないのだそう。
「やっぱり、国府津にないものをつくりたい」
何もない状態のBLEND PARK内。催しによってその姿を変える。(杉山さん提供。2020年撮影)
また、もうひとつ杉山さんの中にあったのが、〝時代に必要なものをつくりたい〟という思いでした。
「これからは、誰もが商売のチャレンジをどんどんできるようになってくると思うんです。ネットの力もあるし、個人で商品を売りやすくもある。個人事業主、個人社長がどんどん増える時代になる」と杉山さんは考えています。
「これからの時代に合わせて、そういう人たちがチャレンジできる、自由に貸切で何かできる、自己表現ができる…そういった場所にしたいなあと思って」
用意するのは、大きいスクリーン、ステージ、空間のみ。
中のソフトは、使う人によって形も変われば、考え方も使い方も変わります。
「海も山も近くにあって、そこも全部取り込んだ〝みんなの公園〟という形で。『PARK』って名前にしました」
「これからは、誰もが商売のチャレンジをどんどんできるようになってくると思うんです。ネットの力もあるし、個人で商品を売りやすくもある。個人事業主、個人社長がどんどん増える時代になる」と杉山さんは考えています。
「これからの時代に合わせて、そういう人たちがチャレンジできる、自由に貸切で何かできる、自己表現ができる…そういった場所にしたいなあと思って」
用意するのは、大きいスクリーン、ステージ、空間のみ。
中のソフトは、使う人によって形も変われば、考え方も使い方も変わります。
「海も山も近くにあって、そこも全部取り込んだ〝みんなの公園〟という形で。『PARK』って名前にしました」
なぜ建設会社に勤めながら、ライフワークとして『BLEND』の活動を?
コワーキングスペース「BLEND-Coworking」。(杉山さん提供。2020年撮影)
海小屋風宿泊施設「SEA CABIN」のウッドデッキ。(杉山さん提供。2020年撮影)
貸切レンタルスタジオ「BLEND-Studio」。(杉山さん提供。2020年撮影)
もともと、日曜大工や、物づくり、建築、インテリア、まちづくりに興味があった杉山さん。
一方で、友人たちと『小田原足柄異業種交流会』を立ち上げて運営、色々な仕事をやっている人と出会い、話し、行き来もしていました。
アウトドアスポーツも好きで、そういった活動も。
建設会社の仕事では空き物件を見る機会も多く、その度に、国府津の古くて味わいある家々やまちの持つ可能性に、ワクワクしていたそうです。
「今までやってきた色んな趣味や遊びや活動が、1人の人間にまとまった影響を与えると、最終的には今の自分みたいな人間になるのかなと(笑)」
特に無理をしている訳でもなく、すべて自然にやっていた、と語ります。
一方で、友人たちと『小田原足柄異業種交流会』を立ち上げて運営、色々な仕事をやっている人と出会い、話し、行き来もしていました。
アウトドアスポーツも好きで、そういった活動も。
建設会社の仕事では空き物件を見る機会も多く、その度に、国府津の古くて味わいある家々やまちの持つ可能性に、ワクワクしていたそうです。
「今までやってきた色んな趣味や遊びや活動が、1人の人間にまとまった影響を与えると、最終的には今の自分みたいな人間になるのかなと(笑)」
特に無理をしている訳でもなく、すべて自然にやっていた、と語ります。
国府津の〝近く〟にも素敵なものがいっぱいある
小さい頃から大人になるまで、ずっと小田原駅のそばで暮らしていたという杉山さん。
商店街育ちで、友人もみんな商人。
海まで遊びに行くことも多かったけれど、小田原には、〝海をあまり感じないまち〟の印象もあったそう。
建築の仕事をしていると、海や山を見ながらの生活に憧れる部分もあり、次第に海を感じる場所に住みたいと思うようになっていきました。
その後、ボルダリングジム(現:BLEND PARK)近くの売地を、価格が下がったタイミングで運良く購入。
商店街育ちで、友人もみんな商人。
海まで遊びに行くことも多かったけれど、小田原には、〝海をあまり感じないまち〟の印象もあったそう。
建築の仕事をしていると、海や山を見ながらの生活に憧れる部分もあり、次第に海を感じる場所に住みたいと思うようになっていきました。
その後、ボルダリングジム(現:BLEND PARK)近くの売地を、価格が下がったタイミングで運良く購入。
「色々考えたら、すごくいい場所だなと思って」
生粋の小田原っ子だった杉山さん、小田原駅前の楽しいことと少し離れることで、さらに広い視野を持てたと言います。
もちろん観光地的なイメージの「小田原」も大好きとしつつも、国府津からなら、二宮に行く方が面白かったり、西湘バイパスで湯河原に行く方が近かったり、御殿場線で山北や松田に行った方がいいなど、違う意味での〝いい場所〟も出てくる、とも話します。
「最近よく言うのが、『国府津になくても、国府津の〝近く〟にも素敵なものがいっぱいある』」
民泊の運営もしている杉山さん、予想外に、海外の人からは〝便利〟〝静か〟〝リゾート〟といったニーズがあるのだそう。
生粋の小田原っ子だった杉山さん、小田原駅前の楽しいことと少し離れることで、さらに広い視野を持てたと言います。
もちろん観光地的なイメージの「小田原」も大好きとしつつも、国府津からなら、二宮に行く方が面白かったり、西湘バイパスで湯河原に行く方が近かったり、御殿場線で山北や松田に行った方がいいなど、違う意味での〝いい場所〟も出てくる、とも話します。
「最近よく言うのが、『国府津になくても、国府津の〝近く〟にも素敵なものがいっぱいある』」
民泊の運営もしている杉山さん、予想外に、海外の人からは〝便利〟〝静か〟〝リゾート〟といったニーズがあるのだそう。
西湘地域全体から見た「国府津」
杉山さんにはもうひとつ別の顔があり、それは〝2市10町(県西地域の2市8町+二宮町、大磯町)をひとつの大きな1枚岩のフィールドとして考える〟というNPO活動の理事長をしているということ。
「2市10町ってすごく面白くて、観光する土地の大きさとしてちょうどいいんです。海外でいうとバルセロナとか。車で移動するにも電車で移動するにもちょうどいい、楽しめる大きさ。そして、山も川も海も、できないことはないくらい何でもある。そもそも自転車で走ったり海や山で遊べば、自然とフィールドや市町村は関係なくなる。アートも音楽も遊びも同じです」
「2市10町ってすごく面白くて、観光する土地の大きさとしてちょうどいいんです。海外でいうとバルセロナとか。車で移動するにも電車で移動するにもちょうどいい、楽しめる大きさ。そして、山も川も海も、できないことはないくらい何でもある。そもそも自転車で走ったり海や山で遊べば、自然とフィールドや市町村は関係なくなる。アートも音楽も遊びも同じです」
また、エリアを横につなぐことで、同様の施設をつくりすぎてしまうようなことも避けられるなど、可能性は観光や娯楽にとどまりません。
西湘全体からの視線ということで、国府津だったらこういう風にしていきたいという、その特徴が、杉山さんには見えやすいのかもしれません。
西湘全体からの視線ということで、国府津だったらこういう風にしていきたいという、その特徴が、杉山さんには見えやすいのかもしれません。
国府津で好きな場所は〝路地〟
国道1号線沿いにある建物の2階に「BLEND-Coworking」、3階に「BLEND-Studio」が入っている。脇の路地のつきあたりが海。(BLEND公式Instagramより)
国府津の海から1号線までたくさん通っている、車が通れないほどの細い道。
その道を横切るように通っている、昔の1号線(旧東海道)。
路地からは突然猫が出てきたり、石垣があったり、海がちらっと見えたり。
その雰囲気が、沖縄のようであり、海の街のような感じであり、何ともいえずに好きだと話す杉山さん。
国府津に引っ越してくる前から、この辺りの路地を全部歩いて、空き家をチェックしていたそうです。
その道を横切るように通っている、昔の1号線(旧東海道)。
路地からは突然猫が出てきたり、石垣があったり、海がちらっと見えたり。
その雰囲気が、沖縄のようであり、海の街のような感じであり、何ともいえずに好きだと話す杉山さん。
国府津に引っ越してくる前から、この辺りの路地を全部歩いて、空き家をチェックしていたそうです。
国府津の海側の路地。(杉山さんInstagramより)
「ここにチョコレート屋さんがきて、ここに革職人がきて、ここに何々屋さんがきて、っていう風に、勝手に色々考えてるんですよ」
空き家を壊さずに、路地裏を様々な店舗でうめていくことができれば、乗換えの電車を1本遅らせてでも楽しみたくなるような、〝歩いたら面白いまち〟になるのではと、日々、思い描いているのだそう。
「こういう細い路地裏には、古くてもめちゃめちゃカッコいいおうちがいっぱいあるので。そこをライフワークでうめていきたいなと」
空き家を壊さずに、路地裏を様々な店舗でうめていくことができれば、乗換えの電車を1本遅らせてでも楽しみたくなるような、〝歩いたら面白いまち〟になるのではと、日々、思い描いているのだそう。
「こういう細い路地裏には、古くてもめちゃめちゃカッコいいおうちがいっぱいあるので。そこをライフワークでうめていきたいなと」
「真面目に楽しいことをやっていきたい」
次々と前例のない斬新なアイデアを形にしていく杉山さんの活動には、注目している人も多く、そういった声はやはり嬉しいと話します。
「期待して見てもらえてるのは嬉しいですね。どうなってる?とか、身体大丈夫?って心配されて支えられてるのも嬉しいです(笑)」
杉山さんにとっての成功とは、まちのお店に注文する人が増えたり、「あのお店があっていいよね」「なくなっちゃうとさみしいね」といった雰囲気になること。
また、これからも「真面目に楽しいことをやっていきたい」と、自らのテーマでもある〝OVACANCES(おバカなバカンス)〟をベースに色々なことができたらと思っているそうです。
「期待して見てもらえてるのは嬉しいですね。どうなってる?とか、身体大丈夫?って心配されて支えられてるのも嬉しいです(笑)」
杉山さんにとっての成功とは、まちのお店に注文する人が増えたり、「あのお店があっていいよね」「なくなっちゃうとさみしいね」といった雰囲気になること。
また、これからも「真面目に楽しいことをやっていきたい」と、自らのテーマでもある〝OVACANCES(おバカなバカンス)〟をベースに色々なことができたらと思っているそうです。
真面目に真面目に…と思うとつまらないことしかできなくなってしまう、ということで、
「あんまり真面目になんないように気をつけないと」
と、最後までユーモアを交えながら明るく語りました。
「あんまり真面目になんないように気をつけないと」
と、最後までユーモアを交えながら明るく語りました。
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