レポート
じつは、日本一の桜の産地なんです!
日本の春の象徴といえば「桜」ですが、ソメイヨシノの花が散り、何だか少し寂しい気分になった頃に咲き始めるのが「八重桜」で、一つの花弁に幾重にも花びらをまとい、ソメイヨシノとはまた違った風情をもっています。
橘地区の小田原市立前羽幼稚園に植えられた1本の八重桜。
この八重桜は、数十年前、隣にある株式会社椎野食品工業所さんから寄贈植樹されたものだそうで、毎年、園児や保護者たちの目を楽しませてくれています。
これまでは、散った花を持ち帰ったり、押し花にしたりしていましたが、今年は、ちょっと違った趣向で桜を楽しむことになりました。
小さな手で一生懸命摘み分けます
2015年4月16日(木)、ポカポカ陽気の朝、前羽幼稚園の先生が脚立に登って3分から5分咲きの花を摘み取り始めました。
しいの食品の椎野輝夫さんの指導のもと、園児たちは茎ごといくつかまとまった花を一つの房ごとにばらしていきます。
「こんなにきれいに取れたよ~!」
「僕だって!」
「きれいに取れたら、花を持っておいで」
椎野さんが、梅酢の入ったバケツに、集められた花を漬けていきます。
その様子をじっと見つめる園児たち。
「こうやって塩を入れて、よく漬けて一晩寝かすんだよ」
向笠弘子園長
「この地域で作られたものが全国に広まっているなんて、とても誇らしいこと。小さな子どものうちから、こうした生活文化を体感し、大きくなって郷土に誇りや愛着を感じてもらえるといいなと思って始めたんです。出来上がったら桜茶を飲みましょうって子どもたちに提案したら、パウンドケーキとかロールケーキも作りたいっていう子もいて、みんなとても楽しみにしてるみたいなんです。おいしいものができたら、もしかしたらこの中から後継者が現れるかもしれないですね。」
これからは、桜花漬け体験が前羽幼稚園の恒例行事となりそうです。
「桜花漬け」とは
結婚式などの祝膳に出す「桜湯」、吸い物や製菓などでよく目にする桜の花びらを塩で漬け込んだもの。
最近では、ロールケーキの上に乗っていたりと洋菓子にも使われるようになったので、食べたことがある方も多いのでは。
桜花漬けには、八重桜の「関山(かんざん)」という品種がおもに使われます。
この関山は、小田原市東部の橘地区から北隣の中井町や秦野市千村地区一帯で栽培され、実は、全国の80~90%がここ小田原で生産されており、隠れた日本一の産地となっているのです。
小田原は梅干しの名産地でもあるので、梅干しを作るときにできる白梅酢を使って「桜花漬け」が作られるようになったとか。
クエン酸などでも漬けられますが、梅酢を使った方がよりきれいな色に仕上がるようです。
日本人に古来から愛されてきた梅と桜
小田原では、鑑賞として愛でるだけでなく、梅干しや桜花漬けとして「食」生活にも見事に無駄なく生かされています。