移住
「小田原は全部がちょうどいい」自然と人のつながりが広がる、小田原での新しい暮らし【岸はつみさん・移住】

そう話すのは、2024 年9月に小田原へ移住した岸はつみさん。
現在は規格外野菜や果物を使ったアイスクリームブランド「n!ce cream」の事業を手がけながら、小田原の地で仲間とともに日々を楽しんでいます。東京出身で、埼玉・越谷での生活を経た岸さんがなぜ小田原に惹かれ、移住を決意したのか。その背景には「人との出会い」「自然との距離感」「自分らしく暮らせる環境」、すべてが無理なく揃う"小田原らしさ"がありました。
食べられるのに捨てられる? モヤモヤが事業の原点に
岸さんが「n!ce cream」を立ち上げるきっかけになったのは、大学1年の夏休みに参加した農業ボランティアでした。 みかん農家を手伝ったことで、農業の世界に初めて触れ、徐々に興味を深めていきます。
同時期、子ども食堂のボランティアにも参加していた岸さんは、 「畑では食べられるのに捨てられてしまう野菜や果物がある一方で、子ども食堂では食材が足りない」 という現実に直面し、強い違和感を抱きます。
「その矛盾にすごくモヤモヤして、じゃあ規格外品を何とかできないかと考えたんです」
その想いが後に、規格外農産物を美味しいアイスクリームに生まれ変わらせる「n!ce cream」の原点となりました。

きっかけは“レモン農家との出会い”
大学時代から農業に関心を持ち、大学卒業後は農業法人に就職した岸さん。
その仕事の関係で埼玉県越谷市に住んでいました。大型商業施設も多く、生活に必要なものが身近に揃う便利なまちでしたが、当時は仕事に集中する日々で地域とのつながりを感じる機会が少なかったといいます。
そんな中、東京で開催された農業コミュニティの飲み会で出会ったのが、小田原でレモン農家を営む槇 紗加さん。
「その場ですごく意気投合して、『今度畑に遊びにおいでよ』って誘われたのがきっかけで、 小田原に初めて足を運んだんです。最初は軽い気持ちで小田原に行ったんですけど、たった 2 泊 3 日で 10 人以上の同世代とつながって。みんな自分で農業や事業をやっていて、なんでこんなに面白い人たちが小田原に集まってるんだろうって衝撃でした」
それまで“1 人で農業”に向き合ってきた岸さんにとって、自然と仲間がそろう小田原の環境はまさに理想郷のように映ったのです。この訪問が転機となり、岸さんは月に 1〜2 回の頻度で小田原を訪れるようになります。

すでに住んでいたような安心感でスムーズな移住
そして、2024年9月、満を持して小田原へ移住。
すでに何度も通っていたこともあり、「移住したときには、半分住んでいたような感覚だった」と話します。
「引っ越しもすごくスムーズで。農家仲間が軽トラや車を出して越谷まで来てくれて、3台で荷物を運んでくれたんです。すごく“お節介”な人たちばかりで(笑)、本当にありがたかった」
岸さんが語る小田原の人々は、ただの“知り合い”ではなく、助け合える“仲間”のような存在。 最初から誰かがいてくれる環境が、彼女の移住を後押ししました。

人と人とのつながりが、仕事も暮らしも広げていく
現在、小田原を拠点に展開する「n!ce cream」では、5軒の農家さんと直接連携。
規格外の果物や野菜を仕入れ、アイスクリームに加工するという、まさに地域密着型のビジネスを実践しています。
「畑に行って一緒に作業したり、近況を話したりしながら、収穫のタイミングや流通の都合で活用が難しいものを共有してもらえる。距離が近いからこそできることがたくさんあるんです」
また、小田原は起業家にとっても恵まれた土地だといいます。
「小田原には起業支援の仕組みや仲間も豊富。ARUYO ODAWARAのチャレンジプログラムやコワーキングスペースの存在など、若い世代が挑戦しやすい土壌があります。相談できる人が多くて、壁打ちができる環境が整っている。事業のアイデアを誰かに話せるだけで、スピードも質も格段に上がると思うんです」
最近では、野菜のアイスにも注目しているとのこと。
「小田原に拠点を移してからは、時期的な影響もあり、柑橘類の活用依頼が中心でしたが、これから夏に向けて、露地野菜の収穫が本格化します。野菜は果物に比べてアイスに加工する事例が少なく、表現としてもインパクトがあるんです。さらに、活用に困っている野菜であればなおさら、価値を見出せるよう尽力したいと考えています」

自然の近くで“自分を整える”暮らし
「時間がある時は海までジョギングして、御幸の浜でぼーっと海を眺めるんです。それだけでスッと気持ちが整う」
また、農作業そのものがリフレッシュの時間になることも。
仲間の畑で作業を手伝いながら 会話を楽しみ、その中でアイデアが生まれることもあるそう。
そんな自然との距離の近さが、小田原の暮らしの魅力です。

“還元できる形”で地域と関わり続けたい
さらには、仲間とともにシャッター商店街での活用プロジェクトも取り組んでいきたいと考えているとのこと。
「まだ何も決まってないけど、みんなが集まれる何かを作れたら面白いなって」
廃棄されてしまう規格外の果物などは全国的な問題であるため、全国を視野に活動しつつも、拠点は小田原に。そんな岸さんの姿に、新しい地方との関わり方のヒントが詰まっています。

小田原を一言で表すと?
「全部がちょうどいい、ですね」
利便性と自然のバランス、都会との距離感、人とのつながりや仕事のしやすさ。
どれをとっても、自分にとって、ちょうどよくフィットする場所がここ、小田原だったといいます。
「移住してから、どんどん人とのつながりや仕事の幅が広がって、パズルのピースがピタッとはまっていく感じ。むしろ、パズル自体がどんどん拡張している気がします」
自分の価値観に素直に、無理のない暮らしと仕事を求めてたどり着いた小田原。
そのちょうどよさは、岸さんにとって、未来へと続く確かな居場所となっているようです。

最後に
でもその先で、自分らしく生きられる場所と出会えたとき、すべてが自然にフィットしていく感覚があるのかもしれません。 岸さんが小田原で見つけたのは、無理のない、自分の価値観に寄り添ってくれる日常でした。
自然とつながり、人と助け合い、好きなことを仕事にできるまち。そんな暮らしを求める人 にとって、小田原は最適なスタート地点となるでしょう。
「暮らしも、仕事も、全部がちょうどいい」 そんな言葉に背中を押されて、次にこのまちを訪れるのは、あなたかもしれません。