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移住

2016.08.01

小田原移住レポート【長田美香さん】

小田原市では、総合計画「おだわらTRYプラン」の後期基本計画をつくる取組の中で、一人ひとりの物語から共に考え、共に創る共創のアプローチという手法で、市民へのインタビューを行っています。
今回は「高齢者がいきいき暮らすまち」をテーマに、インタビューで出会った長田美香さんの物語から、優しい思いが巡る小田原の魅力をご紹介します。

結婚を機に小田原へ

長田美香さん

長田美香さん(50歳代)

小さい頃からピアノを習い、音楽とともに青春を過ごした長田さん。
24歳で結婚し、ほどなく子どもを授かって横浜から小田原に移住しました。
「長男と年子の次男を出産してからは、子育て一色でしたね。」
見知らぬ土地で一人で子育てに明け暮れる毎日。
気がつけば「ただゆっくり眠りたい。」「早く大きくなってくれ。」と、ほかに何も考える余裕がないほど、疲れ果てていたそうです。

家族のような老夫婦の温かさにふれて

そんなとき、マンションの上の階に住む老夫婦が声をかけてきました。
とっさに「子どもがいつもうるさくてごめんなさい!」と謝ろうとする長田さんに、ご夫婦は年を重ねた穏やかな笑顔でこう答えてくれたそうです。
「子どもは泣くのが仕事だよ。よかったらいつでもご飯を食べにおいで」
それからは、まるで家族のように子どもを預かってくれ、長田さんと家族を買い物や温泉にも連れ出してくれました。
次第に心の余裕を取り戻した長田さん。
この老夫婦は、他の親子も世話しており、そのさりげない橋渡しのおかげで、同年代の親子の友達が増えていきました。

ファミリー・サポート・センターとの出会い

ファミリー・サポート・センターのようす
長田さんの3人目の子が幼稚園に入った頃、ファミリー・サポート・センター(ファミサポ)という託児ボランティアを派遣する仕組みがあることを市の広報紙で知りました。
このファミサポは、一般財団法人女性労働協会の活動を基盤として、子どもを預かってほしい「依頼会員」と、託児ボランティアをしたい「支援会員」をつなぐ制度です。小田原市では小田原市社会福祉協議会が運営しており、30分350円から依頼をすることができます。
きちんと研修を受けた20歳代から70歳代の支援会員が、託児だけでなく子どもの送迎から家事支援まで、幅広く子育て世代をサポートしています。
「親しき仲にもファミサポあり」。 この仕組みを通して、子育て世代も安心して頼みやすくなり、地域の知人やママ同士の助け合いも広がっています。

あの日の自分のようなママを支える喜び

長田さん
長田さんはあの老夫婦を思い出し、ママ友を誘って託児ボランティアに参加してみることに。
産後で体力のないママに料理を作ってあげたり、保育園へのお迎えで子どもと手をつないで帰ったりしました。
ほんのひと時の息抜きに、美容院に行きたかったママを送り出すと、「久しぶりに自分のための時間を過ごせました!」と涙まじりの感謝の声が届きました。 
それから20年間、お世話をする子ども達の笑顔に癒されているそうです。
「あの日の自分のように困っているママの心の支えになれて、嬉しい。」
今ではあの老夫婦のように穏やかに笑う長田さん。託児ボランティアの報酬で趣味のハンドベル教室を楽しみ、50歳代の今を精一杯楽しんでいます。

小田原の人の温かさが巡る

長田さんは「託児の活動に、生きがいを与えてもらったわ。」と語りながら、「あのご夫婦と出会えたから、楽しい人生になった。」と笑います。
小田原で受け取った人の温かさを、今では次の世代に引き継ぐ長田さん。
その思いの源泉には、あの日の恩返しの気持ちがありました。
50歳代になり、静岡に住むご両親の介護に向き合う時期になった今、「子どもと同じように、高齢者を助けたい。」と新たな思いを持ちました。
それが、介護に悩む同年代の仲間を支えることにもなるはず。
30年前に受け取った優しさは、今も小田原のまちに巡り続けています。

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