小田原市

小田原発、ライフスタイルを考えるメディア

小田原お仕事レポート【薗部産業 薗部さん】

機械だけでは生み出せない、人の手が"創る"至極の木工製品「めいぼく椀」

"めいぼく椀"はどのようにして出来上がるのか。

うちは、木の加工から最後の仕上げまで、全部この工場でやってる。全部紹介すると少し時間がかかっちゃうかも。

そう言う薗部弘太郎さんについていきながら、"めいぼく椀"がどのように出来上がるのかを、ひとつひとつ教えてもらった。
薗部さんの写真

3つ並ぶめいぼくわん

同じものはない、世界に一つだけのお椀。

 


これからお椀になっていく木材のタワー

薗部産業に運ばれた沢山の木材たち。
欅(ケヤキ)、桜(サクラ)、橅(ブナ)などだ。

「薗部産業で扱う木は、主に広葉樹。広葉樹は、針葉樹に比べて加工がしにくいけれども、その分強度がある。お客さんに長く使ってほしいから。」

木材は、互い違いに積み上げられている。
高く積み上げられた木材は、まるでビルのようだ。

「こうやって積み上げることで、均一に乾燥ができる。そのまま置いておくと、仕上げた後に変形してしまう。」
木材のタワー

お椀をかたどる機械たち

お椀の機械
「ここにある機械は、もう替えのパーツが世の中にないものもある。機械によって、できることが違うから、用途によって使い分ける。さっき乾燥させた木は、まずここで荒加工する。」 

目を輝かせながら説明する薗部さん。
倉庫に並んだ大型の機械たちからも、重厚かつ熟練な雰囲気が漂う。

「ここで荒加工したものを、まずは2ヶ月乾燥させる。うちが大事にしているのが、この乾燥というフェーズ。ゆっくり乾燥させることで、徐々に木の中の水分(含水率)を減らしていく。」
 

薗部産業の秘密部屋

「こっちにも、おもしろいものがある。」

そう言って案内されたのが、”人工乾燥室”。

「さっき乾燥させたものを、ここで木くずを燃やした煙とヒーターで燻しながら乾燥させる。だいたい2週間ぐらい乾燥させる。こうすることで、さらに木の含水率を下げる。夏場はここの中に入ると暑くて大変。」

それでも、ここまでするのには理由があるという。

「以前にアメリカへお椀を輸出していたときに、気候の変化によってお椀が変形したり、割れてしまったことがあった。それは、乾燥が足りなかったから。その失敗をもとに人工乾燥を取り入れた。」

 
人工乾燥室

大事なことは、"割れないお椀"

お椀の乾燥室
「人工乾燥が終わったあと、最低2カ月は日かげで乾燥させる。乾燥させるときのポイントは、日を当てずに、風を当てること。十分に乾燥させた材は風を当ててもびくともしない。」

積み上げられたお椀たち。ひと山に500から1,000のお椀。
部屋全体では、10,000個の粗加工されたお椀たちが並ぶ。

「半年乾燥させているものもある。木の状態や、気候によって乾燥の期間は変えている。そうすると、ものによってここまでに1年かかっていたりする。」

さて、乾燥が終わると、いよいよ職人さんたちの手による本仕上げだ。

「職人さんのところに行く前に、ちょっと見てほしいところがある。」

そう言って、入った部屋は...

職人の魂が生まれる場所

なんと、鍛冶場だった。

うちの職人さんたちは、この鍛冶場で自分の道具を"打つ"。1つのお椀をつくるために、
最低5個の刃物が必要。

燃え上がる火のなかで、自分だけの道具を作る。

職人さんは、自分の刃物を作れるようになって、まずは職人の道のスタート。

職人さんたちのことは、"木地師"と呼ぶ。


 
鍛冶場

ここで、お椀にいのちが宿る

作業場
「ここは、仕上げの工程の作業部屋。木地師さんたちが作業している。」

そこは、各木工師の作業台が並んでいる部屋だった。
作業台の中央に、仕上げ用の轆轤(ロクロ)という機械がある。
作業台の壁を囲むのは、さきほどの鍛冶場で作られたであろう刃物たち。
作業場の壁中を刃物が囲んでいる。


 

職人作業
木地師は、高速回転する轆轤と、自らの刃物をつかって、粗加工だったお椀を丁寧に仕上げてく。

「仕上げ用の轆轤が、粗加工して乾燥させたお椀を高速回転させる。それに、木工師さんたちが、自分用の刃物をあてて、仕上げをしていく。見てもらうと、5本の刃物を使い分けて、表面を滑らかにしている。」

お椀に、お化粧

「仕上げ加工したものは、最後にウレタン加工や漆加工で塗装する。」

漆加工の部屋に入ってみる。

「ここで漆塗りをする。1つの製品を最低5回以上塗る。漆はものすごくシビアな塗料で、ある程度湿度が必要。また、安易に素手でさわってしまうと、手の油で跡がついてしまうので、とても丁寧に扱う必要がある。」

 
漆塗り

とにかく良いものを長く使ってほしい

「とあるイベントで製品を売っていたときに、"ふるさと納税の返礼品でいただいて、使ってみたらとても気に入ったので、全種類揃えるために買いにきました"というお客さんがいた。ふるさと納税がきっかけで、お客さんが喜ぶものを届けることが出来た。自分たちが作ったものが、愛されて長く使われることは何よりも嬉しい。

約2時間弱、薗部産業の見学・案内してもらったなかで、薗部さんは笑顔を絶やすことなく話してくれた。
自分たちの製品にほこりをもち、それをお客さんに届けることが幸せということが伝わってきた。

「自分は、まだまだ木地師としては修行中。もっともっと勉強して技術を身につけたい。」

 
薗部

最新機器が大好きという薗部さん。
やはり、ライバルはいま話題のAI(人工知能)と3Dプリンター?

「この業界の将来的なライバルはAIと3Dプリンターかもしれない。AIがデザインし、材料さえあれば、3Dプリンターがなんでも作ってしまうかも。
でも、うちの職人チームなら負ける気はしないかな。

人の手によって、ものに命が宿るとき、一番大事なことは作る人の"熱い想い"なのかもしれない。
薗部産業には、それが溢れている。