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姫七さんがサーフィンをしている様子

オリンピック候補強化指定選手【鈴木姫七さん】

酒匂の海から日本の女王へ

小学校4年生からサーフィンを始めたという鈴木姫七さん。
お父さんの影響で始めてから、すぐにその魅力のとりこになりました。
酒匂を拠点に腕を磨くこと6年。
高校1年で全日本大会初優勝。
一昨年、高校2年のときには日本サーフィン連盟主催の主要4大会全てで優勝。
2年連続で年間ランキングトップとなり、文字通り日本の女王となりました。
しかし、昨年は怪我に悩まされ、主要大会に出場できず涙の1年に。
それでも、今年も全日本強化選手として選ばれた彼女の実力は折り紙つきです。

そんな彼女の目は、既に「世界」を見据えています。
怪我から復帰し、高校3年の終わりに選んだ修行の地「ハワイ」。
今回、その武者修行から帰った姫七さんに聞きました。
岸に上がる鈴木姫七さん

まるで壁

ハワイで波に乗る姫七さん
1ヶ月の武者修行を終えた姫七さんがハワイの波をこう語ります。
「何度も死にそうになりました(笑)。」
笑顔で語るその影には、一回りも二回りも成長した自信がみなぎっていました。
ハワイ・ノースショアでは、酒匂の海岸から見る西湘バイパスの壁を思い起こさせるようなビッグサイズの波を幾度となく経験。
「ハワイの波は、思っていた程グッドウェイブではなかったです。ほんとに壁みたいで、乗りこなすためにはスキルもフィジカルもレベルアップしないといけない。ハワイに行って、トレーニングの大切さも知りました。」
海外の選手は日本の選手に比べてトレーニングも大切にしています。
波に乗って、トレーニングをして、スキルとフィジカルの両方を高めています。
「激しいトレーニングではないですが、パドルだったり、体幹やバランスを強化したり、今日みたいに波があまりよくないときはトレーニングに当てることも必要かもしれませんね。」
しかし、成長したのはサーフィンの技術や体力面だけではありません。
「ハワイには弟と一緒に行っていましたが、1ヶ月間別々のところでホームステイしていたので、人間的にも成長できました。」
一緒にサーフィンの腕を磨く弟を残し、一足先に帰国した姫七さんは、プロサーファーとして活躍する弟思いのお姉ちゃん。
「今度は弟も一緒に取材してください(笑)」

酒匂の波は海外の波に似てる

酒匂川の河口は地形がよく変わります。
今は酒匂川の河口が横に流れていて、海にまっすぐ流れていません。
地元のサーファーたちは、工事で酒匂川の河口を海にまっすぐ流してくれることを期待しています。
そうすると、波に乗るのは難しいですが、沖合いできれいに割れる波が立ちやすくなるとか。

「酒匂の波は海外の波に似てますね。掘れてて、速くて、サイズがあがると巻いたりして。」
かつては全国大会なども行われていた酒匂川の河口付近。
数年前、地形が固まり頻繁に波のサイズが上がったときは、噂を聞きつけた海外のサーファーもこの海に入りにきたほどです。
「当時はまだ小学校6年生くらいで、入ってはみたかったけど、怖くて入れなかったですね(笑)。」
サーフィンを始めてまだ2年位の当時は、到底太刀打ちできない波だったようです。

この日、サイズはそこそこだったものの、波が速く岸近くでのブレイク。
酒匂の特徴的な波でもある難しいコンディションの中、私たちの前できっちり大技を決めてくれました。
酒匂の海

4月から新たなステージへ

通信制の星槎大学へ進学が決まり、4月から大学生活が始まります。
サーフィンと大学との両立を図る彼女にとって、通信制の大学はまさに渡りに船。
「春からは千葉にロングステイして、サーフィンをしながら、大学にレポートを提出する、そんな生活になると思います。もちろん、たまにゆっくりしに小田原に帰ってきますけど(笑)。」
拠点となるのは、東京オリンピックのサーフィン会場にも選ばれた千葉県の釣ヶ崎海岸。
もちろん、東京オリンピックを見据えてのこともあるようですが、彼女は単純に「昔から釣ヶ崎の波が好き」とのこと。
まるで、オリンピックの女神から選ばれていたかのような偶然です。
 
 

世界ではまだ勝てない

3年後のオリンピックはまだ先のこと。
日本の頂点に、幾度となく立った彼女が見据えるのは「世界」です。
「日本の大会にはあまり出ないです。」
そう語る彼女が今目指しているのは、5月にフランスでの開催が決まっている世界大会。
この世界大会に出場し、世界への扉を開くことが3年後の東京オリンピックにつながると考えています。
「日本の大会で勝てても、世界じゃ勝てないですから。」
遠く波のうねりを見つめる瞳は、海の向こうにいるライバルたちに向けられたものだったのかもしれません。

サーフィンの人気が高まるのはいいけど・・・

「東京オリンピックの種目にサーフィンが決まってから、テレビでもサーフィンの話題がよく出るようになったし、街でも『頑張ってね』と声をかけられることが多くなりました。」
彼女はサーフィンの人気が高まっていることを肌で実感しています。
メディアで取り上げられたことで、サーフィンへの距離が縮まり、より身近になりつつあります。
しかし、一時の人気と危惧する一面もあるようです。
「サーフィンがこれからずっとオリンピック種目であるとは限らないし、たぶんそうはならないと思う。そうなると、高まった人気も落ちていくと思う。そのときに、自分に何ができるのかなと考えたりします。」
遠く波を見つめる姫七さん

遊びでやってる訳じゃない

「昔からよく、『サーフィンは遊びでやってるの?』と言われました。海に入ると髪の毛の色も抜けるから、見た目とかでよくそう言われましたね。」
サーフィンは、どうしてもスポーツとしては「軽く」見られがちとのこと。
人気が高まり、サーフィンが身近になったことで、「ファッションでサーフィンをする人も増えている。」とか。
「酒匂の海に入っている仲間は、この海を守ろうみたいな思いもあると思います。毎月、仲間でビーチのごみを拾ったりもしてます。」
酒匂の海に入るサーファー仲間は、月に1度ビーチクリーンをしています。
この海でサーフィンを楽しむ人のマナーとして。
毎日のように海に入っていれば、海難事故にも直面します。
姫七さんの父親は、サーフィン中にこの海でおぼれている子どもを見つけ、決死の救助活動の末、命を救ったこともあります。
海が好きで、海に楽しませてもらっているからこそ、海とともに生き、海を大切にしています。
決して遊びでできることではありません。
「レベルの高いサーファーがしっかりとルールやマナーを守っていけば、ファッションでサーフィンを楽しむ人たちにも伝わるはず。」

将来はわからないけどそのとき自分が何をしたいか

「昔はサーフショップの店員もいいなと思ってましたけど、今はそうは思わないですね。やりたいことがあるので。」
やりたいことはサーフィンだけではありません。
彼女のサーフボードは自身でデザインしたもの。
「デザインもやりたいんです。」
これが彼女の強さなのかもしれません。
「将来どうなっているかはわからないけど、そのとき自分が何をしたいかだと思う。そうすると、今サーフィンをやっていることは決して損にはならないと思っています。デザインの仕事をするにしても、サーフィンで知り合った人やスポンサーさんなどは必ず自分の財産になると思うので。」
サーフィンに固執してるわけではない、だからこそ、今、サーフィンに集中できる。
そんな潔さが彼女をアグレッシブに挑戦させている原動力のようです。
 
 

普通の女子高校生

「日本って、めっちゃ乾燥してますよね~(笑)」
海に入っていたときは、遠くの波を鋭く見つめ、果敢に波に板をぶつけていた姫七さん。
海をあがると、高校3年生の女の子。
もちろん、美容にも敏感です。
サーファー鈴木姫七だけではない、普通の女子高校生、姫七さんの一面ものぞかせます。

笑顔で語る鈴木姫七さん