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レポート

2015.05.07
寄木細工の数々
寄木細工の数々

色もカタチも違うから、素敵なリズムを奏でられる
―――若き寄木細工職人たち「雑木囃子」

小田原には、約1,200 年続く、木工の歴史が脈々と流れている。その歴史の中で生まれたのが、若き寄木細工職人のグループ「雑木囃子」。それぞれが伝統技術の腕を磨きながら、6人6様の作品をつくり出し、未来につながる歴史の担い手として活躍している。
小田原漁港近くに寄木細工職人・太田憲さんが営む工房併設のショップがある。彼の代表作は、多様な木の色合いと質感を組み合わせたボタン。伝統工芸品、寄木細工のイメージを大きく変え、日本のみならず世界に、そのファンが広がっている。
山形生まれ、埼玉育ちの太田さんは寄木細工職人の募集案内に引かれ、妻と子どもを引き連れ、10年前に小田原に移り住んだ。
少し離れた山側の自宅からは、工房と海が一望できる。「都心から戻って、この景色を見ると落ち着きます」(太田さん)
太田憲さん
『生活の中で愛着を持って、
長く使ってもらえる作品をつくりたい』

―太田憲さん

それは、親方の一言から始まった

『雑木囃子』は、2005年に結成された。「当時、寄木組合主催の研修に参加していたとき、『若い世代がこんなに集まることはなかなかないので、みんなで何か始めなさい』と親方に言われたのがきっかけです」(石川さん) 
親睦を深めるために鍋パーティを開催し、そこで生まれたのが『雑木囃子』。
石川裕貴さん
『その時代によって変われる。
それが寄木細工です』

―石川裕貴さん

多種多様な木材から1つの作品をつくる寄木細工のように、「個性豊かな6人が集まれば、素敵なリズムが生まれる」という思いが込められている。
2011年、雑木囃子は、フランス・パリで開催される国際見本市「メゾン・エ・オブジェ」に、著名なプロダクトデザイナー喜多氏の推薦のもと、初めて出品した。結成わずか6年後だ。
「現地の反響は大きかったです。寄木の緻密な美しさや、つくり方に驚く人がたくさんいました」(石川さん)

それぞれの個性で寄木細工の未来を創る

石川さんは、寄木細工の創始者・石川仁兵衛を祖とする老舗工房の7代目を叔父に持つ。彼のこだわりは、今までにない新しい模様を考えて作品にすることだ。伝統技術の腕を磨きながら、時代に合った新しい作品に挑戦していける。
「素材も寄木細工の大きな魅力であり、それを楽しんでもらいたいです」(露木さん)
露木清高さん
『思わず話が弾むモノの力に憧れます』

―露木清高さん

露木さんは、幾何学模様が単調という寄木細工のイメージを払拭するため、木の色を生かしながら、全体で見せるデザインを考え、ろくろをかけることで通常では出せない曲線を表現している。
そして、「二崩」という模様にこだわっている太田さん。正方形に切った木と木の間に薄い木を挟んでいくのが二崩模様の特徴だ。色はすべて自然の中にある。
「ボタンは子ども、ピアスは妻がつけられるようにつくり始めました。僕が目指すのは生活の中で長く使ってもらえる作品です」(太田さん)
小田原の木工の歴史は約1200年。寄木細工をはじめ、木地挽びき、漆器、指し物、木象嵌、からくり細工など、多くの木工品が密集している。その魅力に気づいた若者たちが、小田原で新たなリズムを奏で始めている。

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