小田原市

小田原発、ライフスタイルを考えるメディア

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井手さんは、福岡県久留米市出身。大学入学とともに上京し、社会人になり仙台や横浜に住み、小田原に来る前は、練馬区に住んでいました。
現在は、慶応大学経済学部教授で財政社会学を講義しているほか、著書やテレビ出演も多数あります。
『経済の時代の終焉』(岩波書店)では、第15回大佛次郎論壇賞を受賞しました。

移住のきっかけ

仕事の関係で一年ほどアメリカで暮らし、2014年2月に日本に戻ってきました。その時は、飛行機で20時間近くかけて帰ってきて、重いスーツケースを持って成田から吉祥寺までバスに揺られました。
さすがに外食するのもしんどくてね。駅近くのお店でご飯を買って帰ろうということになり、スーパーに行ったんですよ。そしたら、あまりに混みすぎてて、買い物はおろか、身動きもできない状態。連れ合いと「あ〜もうダメだ」ってなったのが始まりでした。
昔から、東京は人が多すぎて余計なストレスがかかりすぎるので、好きじゃなかったんですよ。
東京を離れる勇気ってなかなか持てないじゃないですか。でも、そのストレスのせいか、毎年のように大きな病気をした。おまけに連れ合いの実家が福島の郡山で、原発問題まで起きちゃったから、東京がますます居心地悪くなった。

井手英策さん

井手英策さん(40歳代)


あと、子供が3人いるんですが、大都市じゃないところで大きくなってほしかったんですよね。僕が田舎者だから(笑)
人間って自然や人のぬくもりを求めて生きていると思うんです。でも、都会にはビルが多くて空もなければ、自然もない。人と人もいがみ合って生きているなぁって。朝の通勤ラッシュを見てればわかるでしょ?ちょっと押されただけでイラっとしたり、人を押しのけて座席を確保しようとしたり、みな苦渋に満ちた表情をしていて‥。人間本来の生活の場所ではないなぁと思うんです。いつもイライラして子どもを叱るような毎日は嫌でしたし、人間らしく生きていこうと思うなら、東京から離れたほうがいいんじゃないかなって思った。
命や家族の幸せには変えられない。少し落ち着いて、少し感性を研ぎ澄ませばわかること。みんな気づいてると思うんですけど。何か一歩を踏み出す勇気が必要なのかもしれない。

戦国時代関東を治めた北条氏の居城小田原城

戦国時代、関東を治めた北条氏の居城「小田原城」

町内会のあんこう鍋

町内会のあんこう鍋

海を臨む山でみかん狩り

海を臨む山でみかん狩り

子どもの頃からの小田原の記憶

「さあ、どこに住もう」と考えた時に思い浮かんだのが、小田原だったんです。
子供の頃から歴史好きで、歴史の漫画をよく読んでいたんです。戦国時代は関東を平定した北条早雲で始まり、秀吉の小田原攻めで終わりますよね。大人になって新幹線に乗るようになると、小田原を通過する時に必ず小田原城を探してました(笑)
それと、僕のふるさとの久留米にも、連れ合いの実家のすぐそばにも、大きな川、きれいな川があったので、住むなら、海とか川とか水辺のあるところがいいなって話していました。
小田原には、海も川も山もあるし、近くに温泉もあるじゃないですか。
一度行ってみようという気持ちになり、一人でふらっと訪ねたんですよ。
そしたら、とっても雰囲気がいい。
東京にはない「街の匂い」がある。
連れ合いにすぐ報告して、家族で遊びに来ました。で、即決(笑)
アメリカから帰って2か月も経たないうちに、東京の家を売り払って小田原に引っ越してきました。それが2014年4月のことです。
僕は仕事場が品川に近いので、新幹線で行けるということもメリットでした。ふだんは東海道線で1時間15分かけて通勤してますけど、絶対に座れるから全然苦になりません。それどころか、朝日を浴び、海を眺めながら本を読める。ぜいたくな話です。
引っ越して1年半近くは、賃貸マンションに住んでいたんですが、その間に物件を探し回って、お城と海の間にある高台の土地を購入して、家を新築しました。

季節を感じ、人とふれあう暮らし

小田原は、例えば食べ物一つをとっても、すごいですよ。
海の幸は豊富だし、野菜や柑橘など旬の地の物が、たくさんあるのが素晴らしい。
15分から30分ほど車で行けば、海、山、川、田園、歴史的な街並みなど、実に多彩な表情の風景が見られるし、温泉にも入れる。
季節の移ろい、繊細な変化。
まさに一瞬一瞬の変化を食事や散歩などの日々の暮らしの中で感じることができる。
1年中飽きずに生活を楽しめます。
小田原に来て嫌だと思ったことは一つもないんですよ。
最初はよそ者だし、やりにくいんだろうなって思ってたんですけど、とあるホルモン屋さんで飲んでたら、地元の人が声をかけてくれて、仲良くなった。その縁でいろいろ誘ってくれて、自分の住んでいない町の町内会ですよ、浜町の(笑)しかも行事が熱い(笑)
獲れたてのさざえやあんこう鍋を食べさせてもらったり、子どもたちと流しそうめんをやったり、御輿を担ぐことになったりして、もう例会参加は日常行事。すごく敷居が低くて、地域にすぐに入り込めました。
小田原も10年前は様子が違ったのかもしれませんけど、今は間違いなく地域が身近なまちです。
そういうのが好きな人には、たまらんでしょうね。


本当の「ゆたかさ」があるまち

東京に住む大きな理由のひとつは教育でしょ?
でも、いい学校に入れることが目標になると、他人の子どもを敵視するようになる。自分の子供が失敗すると、何か自分も含め、人生で敗北したような気持ちになってしまって、全然幸せじゃない。
たとえいい大学に行って、一流企業に入ったとしても、幸せになれるわけじゃない。
でもみんなが何となくそういうレールに乗ってしまっている。
他にどうすればいいかわからなくなってる。
選ぶべきは住む場所じゃない。生き方ですよね。
地方では都会にない生き方ができる。人間らしい生き方。


もちろん、小田原にも、そういう競争的な部分はありますよ。
でも、小田原に生まれ育って地元で働いて頑張っている人がたくさんいて、そのおかげで昔からの一次産業、二次産業、伝統産業も続いている。
お祭りや地域行事もそう。社会の厚みが違う。
地域や学校で誰にもいろんな役割、居場所があって、一人ひとりの人間が大事にされる。
隣人は敵じゃなく、協力者なんです。暮らしの質、人間の価値が高いといったらいいのかな。より実感のある暮らしができる。
ずっと小田原に住んでいると、なかなか気づかないのかもしれませんが、むしろそういう人が自分たちのまちの良さに気づいて、地元で頑張っていく人がもっと増えたらいいと思いますね。
そうしたら、自然と小田原の良さが外に広がって伝わるんじゃないかな。

子どもにも最高の場所

子育て世代にはすごくいい環境です。
山に行ってみかん狩りをしたり、富士山やきれいな海を眺めたり、海辺でたこ揚げをしたりして、とても楽しんでます。
こんなこと東京ではできないですもんね。
そういえば、7歳の長男がこの前おもしろいことを言ったんですよ。
うちは、小さい頃から引っ越しが多くてね。
4歳で「人生は旅だね」と言い、初めて書いた書き置きも「旅に出ます」だった(笑)
小田原に家を建てた時に「今度は、いつ引っ越すの?」と聞いてきたんです。
「これからはずっとここにいるよ」って答えたら、「よかったー!ここで。小田原にずっといられるんだ」って。
子どもにとって最高の場所は、大人にとっても最高の場所だと思います。
お客さんへのおみやげに悩んでしまうほど、自慢すべきものがたくさんあるまち。
もっと多くの人に遊びに来てほしいな。いい飲み屋に連れて行ってあげたい(笑)

御輿を担ぐようす

御輿を担ぐようす

子どもと浜辺で気持ちよくたこ揚げ

子どもと浜辺で気持ちよくたこ揚げ